コレクション紹介

描かれた動物・植物―江戸時代の博物誌―

伊藤文庫

伊藤圭介の肖像

幕末から明治中期にかけて活躍した理学博士伊藤圭介(1803-1901)が収集し、孫でやはり理学博士であった篤太郎(1865-1941)が所蔵していた本草学関係書約2,000冊。昭和19年に遺族から購入した。

伊藤圭介は文化3(1803)年本草学の盛んな名古屋の医家に生まれた。錦窠などと号した。蘭語および蘭方医術を学んだ圭介はシーボルトに師事した。シーボルトから贈られたのがツュンベリーの『日本植物誌』(FloraIaponica,1784)であり、同書をもとに圭介が、同書に収載されている植物の学名(ラテン語)をABC順に並べ、対応する和名・漢名を記した『泰西本草名疏』を文政12(1829)年に刊行した。その後安政6年には洋学館総裁心得、文久元年には蕃書調所出役となった。明治10(1877)年には東京大学員外教授、14(1881)年に教授となり、同21年には日本初の理学博士号を授与された。同34(1901)年99歳で没した。

圭介の集書は薬物学的な本草書はそれほど多くはない。しかし、『植物図説雑纂』『錦窠禽譜』といった未刊稿本類や一枚物資料を多数含む編綴資料、森立之と服部雪斎による『華鳥譜』自筆本、栗本丹洲による『翻車考』、岩崎常正や武蔵石寿など有名本草学者の稿本・手沢本なども多数含まれる特徴あるコレクションである。

白井文庫

白井光太郎の肖像

東京帝国大学農科大学の教授を務めた白井光太郎(1863-1932)の旧蔵書。本草学関係の和漢洋の古書など約6,000冊。昭和15年から17年にかけて帝国図書館が購入した。

白井光太郎は、東京帝国大学などで教鞭をとり、植物病理学の発展に大きく寄与した。その一方で、白井は明治24(1898)年、わが国の博物学発展の経緯を日本で初めて系統的にまとめた『日本博物学年表』を上梓した。この著作は、その後2回、増補改訂して大著となったが、使用された資料のほとんどが、当館の白井文庫に含まれている。

そのなかには、李時珍の『本草綱目』和刻本を多数収集したり(本展示会では、4点を展示)、江戸時代の植物図鑑ともいうべき岩崎灌園による『本草図譜』や、その関連記録である『本草図譜記』、また同じく岩崎灌園の手になる『シーボルト肖像』など、本草学史に欠くことのできない資料や、特徴ある資料が残されている。こうしたなかには『植村政勝薬草御用書留』『諸州採薬記』など、白井自ら手写した資料もみられる。また、『七福神草』『八翁草』など園芸書、そして動・植・鉱物の考証書や医薬関係書にいたるまで収集されており、きわめて幅広く網羅的なコレクションといえる。

小野家旧蔵書

小野蘭山の肖像

小野家旧蔵書は、平成13年7月に小野蘭山(1729~1810)の御子孫である小野強氏より寄贈を受けた小野蘭山関係資料89点である。

江戸時代最大の本草家・博物家である小野蘭山は、25歳の開塾より82歳で没するまで生涯に指導した弟子の数は全国に一千余人といわれる。当コレクションの中には、蘭山が長年『本草綱目』の講義に用いた自筆講義録『本草綱目草稿』、京都の私塾衆芳軒にて書かれた『衆芳軒随筆』、71歳以降幕府の要請で江戸の医学館で講義を行っていた頃の様子が綴られる『小野蘭山公勤日記』、新出資料であり弟子村松標左衛門(1762~1841)に宛てたとみられる『小野蘭山寛政七年書簡下書』、などの自筆資料や、大坂の文人・博物家として知られた木村蒹葭堂が入門の際に蘭山に提出した『誓盟状』、弟子の一人であった谷文晁(1763~1840)が描いた肖像画『蘭山翁画像』などがあり、いずれも江戸時代博物誌の歴史上貴重な資料である。

他に、蘭山の孫小野職孝もとたか(1774~1852)著作『本草多識編』、曾孫小野職実もとみ(1799~1873)の日記『御用留』、玄孫で文部省博物局の職員であった小野職愨もとよし(1838~90)の関係資料等、小野家代々の人々の資料も含まれている。

なお、小野蘭山の自筆本は東洋文庫にも、『博物名譜』『万国管闚』『観文介譜』等が所蔵されている。

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