合戦・寺社縁起絵巻

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第1章 第3節

合戦・寺社縁起絵巻

平安時代後期から鎌倉時代、南北朝時代にかけて続いた戦乱の時代に誕生したのが、合戦絵巻である。緊迫した戦場の描写は残酷で生々しく、詳細な武装や武具の描写は、当時の戦場の様子を伝える貴重な史料ともなっている。一方、動乱の時代の中では、仏教が現世における苦しみからの救済手段として存在感を増していった。各宗派は教義を体系化し、布教を進めようとして寺社縁起やその絵巻などが多く作成された。

平治物語絵巻

12 平治物語絵巻 住吉内記ほか写 [寛政(1789~1801)頃] 【WA31-4】 ※原本は鎌倉中期の成立 

平安時代末期、武家政権の誕生前夜に起きた内乱のひとつ、平治の乱(平治元(1159)年)を描く絵巻です。後白河院の寵臣、藤原信頼は、院の有能な側近である信西しんぜいと反目します。源義朝を味方につけた信頼は、有力武家の平清盛が都を離れている隙に後白河院と二条天皇を誘拐し、院の御所である三条殿を焼き払います。追われた信西は自害し、その首は西獄門に掲げられます。急ぎ戻った清盛は後白河院と二条天皇を奪還します。信頼は討たれ、義朝も逃走中に殺害されます。

東京1期(10/1~12)

東京3期(10/28~11/9)

蒙古襲来絵詞

13 蒙古襲来合戦絵巻 書写年不明【寄別1-3-1】 ※原本は鎌倉中期の成立

元寇と呼ばれる蒙古(元)軍の襲来とその合戦の様子を、肥後国の御家人竹崎季長を中心に描いたものです。前半に1回目の侵攻である文永の役(文永11(1274)年)を、後半に2回目の侵攻である弘安の役(弘安4(1281)年)を描いています。
日本とは異なる蒙古軍の武具や船、「てつはう」という火器などの武器が描かれています。

東京2期(10/15-26)

関西(11/15~29) 展示箇所は、蒙古の軍船に乗り込んで戦う御家人の様子を描いた場面。弓を射かけたり、船を漕いだりする様々な蒙古兵の様子も描かれている。

粉河寺縁起

14 粉河寺縁起 書写年不明【ん-86】 ※原本は平安後期の成立

紀伊国粉河寺の草創と、本尊千手観音の霊験を描く物語です。
紀伊国の猟師、大伴吼子古おおとものくしこは山中に光る土地を見つけ、庵を建てました。この庵を童行者が訪れ、千手観音像を彫って去りました。一方、河内国の長者の娘で、腫れの病に苦しむ者がいました。童行者が訪れて千手陀羅尼を唱えると、娘は平癒しました。父母は歓喜して御礼の宝を積みますが、童行者は提げ鞘(小刀)と袴のみ持って去りました。
長者一家が、童行者が住むという粉河を訪ねてみると庵があり、中に提げ鞘と袴を持つ千手観音像がありました。一行は伏し拝み、仏道に帰依しました。

粉河寺に伝わる絵巻には、焼けて失われた箇所がある。当館の模本はさらに数か所の絵と詞書を欠き、彩色にも省略された箇所がある。

東京2期(10/15-26)

石山寺縁起

15 石山縁起 書写年不明【ぬ二-6】 ※原本は鎌倉後期から江戸後期の成立

近江国、石山寺の縁起絵巻。石山寺の起源や本尊観世音菩薩の霊験譚などを描きます。

石山寺所蔵本(重要文化財)は7巻あるが、展示資料は第1巻~第5巻の模本である。石山寺所蔵本の6巻・7巻の絵が描かれたのは文化2(1805)年であり、当館模本はそれ以前に作成されたものかもしれない。

東京1期(10/1~12) 展示箇所は、宇多院の石山寺参詣にまつわる話です。石山寺に頻繁に参詣していた宇多院は、近江の国司が「度々のご接待で、民が疲れてしまう」とこぼしていると聞き、参詣準備を自身の荘園にさせることにしました。国司は恐縮し、院の帰りに合わせ、打出の浜に美しい仮屋を建て、和歌の名手である大伴黒主(おおとものくろぬし)を控えさせました。院は仮屋にしばし留まり、黒主に贈り物をして帰りました。

東京3期(10/28~11/9) 展示箇所は、紫式部が石山寺に参籠し、源氏物語の着想を得る場面です。詞書では紫式部が中宮彰子から、一条天皇の叔母、選子内親王に贈るための物語作成を求められます。石山寺に参籠した式部は、広々とした琵琶湖の景色を見るうちに、ふと物語の情景を思いつき、経典書写用の料紙を借りて、これを書きつけたとあります。

関西(11/15~29) 展示箇所は、石山寺霊験譚のひとつ。訴訟のために上京した人が思いどおりの院宣(上皇または法皇の命令を記した文書)を賜り、喜んで帰国する途中、勢多の橋を渡る際に、従者の下人が院宣を川に落としてしまいました。下人が泣く泣く石山寺に参り祈ったところ、「宇治川の辺で魚を買え」とのお告げがありました。翌日、3尺の鯉を買い取り、腹を割いてみると、落とした院宣が出てきました。

参考文献

合戦・寺社縁起絵巻

このページは企画展示「ひろげて、まいて、あらわれる 絵巻の世界」の電子版コンテンツです。

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