資料としての絵巻

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第2章 第4節 絵巻の周辺1

資料としての絵巻

国立国会図書館では、医学史家の富士川游(1865-1940)の旧蔵書の一部を所蔵している。富士川は、有史以前から近代までの日本の医学の変遷をまとめた『日本医学史』(1904)を著したことで知られ、和漢の医学書や西洋の医学書の翻訳書、日本の医学に関する書物などを収集した。平安時代にまで遡る膨大なコレクションは、現在は京都大学や慶應義塾大学などにも所蔵されており、当館は医学史に関する書写資料や医学関係者の書簡等を所蔵している。
ここでは、富士川の旧蔵書に含まれていた絵巻と、巻子形態の医学史関連資料を紹介する。絵巻の受容の形は様々であり、富士川は絵巻を、他の医学史関係資料と同様に、当時の医学の知識や病・治療に対する認識を知るための資料として用いたと思われる。

病草子

「病草紙」は、平安時代末期から鎌倉時代にかけて成立したとされる、種々の病気や治療の様子を描いた絵巻である。絵や詞書には説話の要素も含まれている。「病草紙:異本」も同様に様々な症例などを描いており、その絵の構図や人物の表情には「病草紙」に類似した表現がみられる。また、「病草紙:異本」には詞書をもつ模本が確認されていない。展示資料はいずれも近世の模本であり、「病の草紙」【す-109】と「病草紙:異本」【す-110】が富士川の旧蔵書である。

51 廢疾画 書写年不明 【寄別1-4-2】

東京1期(10/1~12)

52 病の草紙 嘉永7(1854)年 写【す-109】

関西(11/15~29)

53 病草紙 : 異本 書写年不明 【す-110】

東京2期(10/15-26)

東京3期(10/28~11/9)

参考資料

ここで紹介する資料は、国内外の医学書などの図を写して巻子に仕立てられたもので、形態は絵巻と似ているが、図譜あるいは医学図集とでもいうべきものである。いずれも富士川の旧蔵書である。
「華岡青洲の実験圖」は様々な疾患の患者の絵を集めたもので、居所や年齢など患者の情報もあわせて記されている。「整骨図」は顎や腕、脚の整骨術を図解したもので、これらは勉学に役立てられたと考えられる。
「阿蘭陀外科宗伝画図」には西洋の医療器具や治療の様子が描かれている。江戸時代前期の通詞兼医師である楢林鎮山が、フランスの外科医パレ『外科全書』のオランダ語版などから著した「紅夷外科宗伝」という書籍と「阿蘭陀外科宗伝画図」には似た図も確認できる。そのことから、何らかの関連があることがうかがえる。冒頭には、楢林鎮山の後裔と思われる楢林栄哲が弟子に授与した、医術習得を証する文書が付いている。

華岡青洲の実験圖 書写年不明 【本別10-28】

東京1期(10/1~12)

整骨図 [江戸後期]写 【す-100】

東京2期(10/15-26)

阿蘭陀外科宗伝画図 書写年不明 【本別10-26】

東京3期(10/28~11/9)

参考文献

資料としての絵巻

このページは企画展示「ひろげて、まいて、あらわれる 絵巻の世界」の電子版コンテンツです。

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