ハラールについて知る
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アジア情報室 作成
ハラール(ハラル)とは、イスラーム法において「許されたもの・行為」を意味します。それに対して、イスラーム法で「禁じられたもの・行為」をハラーム(ハラム)といいます。例えば、イスラーム法では、豚肉、豚由来の成分、イスラームのと畜方法で処理されていない動物の肉等はハラームとされ、口にすることが禁じられています。また、アルコールも避けるべきと考えられています。
イスラームの規範に従って生活するムスリム(イスラーム教徒)にとって、ハラールやハラームの概念は、食事をはじめとして生活全般に深く関わっています。ここでは、ハラール食品やハラール対応に関する情報源をご紹介します。【 】内は当館請求記号です。
1. ハラールについての基礎知識
- 阿良田麻里子著『食のハラール入門今日からできるムスリム対応』(講談社 2018 【DL681-L295】)
飲食業界、飲食品販売店舗、宿泊施設、旅行業界で働く人等を主な読者層として想定したムスリム対応の入門書です。基礎的なハラールの原則、ハラール食の認証制度、ムスリム消費者のハラールに対する意識の多様性、飲食サービスにおけるムスリム対応のヒント等を紹介し、ムスリム観光客の受入れに向けた具体的な対応策を提示しています。付録として「礼拝への対応」「断食への対応」「ハラール食材の入手方法と情報サイト」を掲載しています。 - 「ムスリムおもてなしガイドブック」(観光庁)
観光庁が、ムスリム旅行者が安心して快適に滞在できる環境の整備を図るために作成したガイドブックです。新たにムスリム旅行者を受入れようとする飲食店や宿泊施設等向けに、ムスリムの生活習慣、食や礼拝に配慮した具体的な対応方法、英語による対応文例等をまとめています。 - 「ムスリム旅行者おもてなしハンドブック」(東京都産業労働局観光部受入環境課)
東京都産業労働局が、ムスリム旅行者の受入れに関する基本知識や対応策をまとめたハンドブックです。ムスリムの食事・礼拝・習慣・マナーに関する基礎知識、接遇のポイント、東京都内での取組事例、都内の礼拝所マップ等を掲載しています。
ムスリムの食文化やイスラーム法におけるハラールの規定について詳しく知りたい場合は、以下のような資料があります。
- 八木久美子著『慈悲深き神の食卓 : イスラムを「食」からみる』(東京外国語大学出版会 2015 【HR61-L2】)
イスラームにおける「食べる」という行為に焦点を当てた資料です。聖典クルアーンやムハンマドの伝承のなかの食に関する記述、食物禁忌、ラマダーン月の断食、イフタール(ラマダーン月の日没後の食事)等について紹介しています。「第三章 意識化される食行動―規範とアイデンティティ」に、ハラールの概念やハラール認証についての説明があります。 - 小杉泰著「イスラーム法における「ハラール」規定をめぐる考察 : 「ハラール/ハラーム」の2分法と法規定の「5範疇」の相関性を中心に」(『イスラーム世界研究 = Kyoto bulletin of Islamic area studies 』 / 「イスラーム世界研究」編集委員会 編 12:2019.3 pp.170-188. 【Z71-T467】)
イスラーム法における「ハラール/ハラーム」の 2 分法と法規定の「5 範疇(「ファルド(義務)」「マンドゥーブ(推奨)」「ムバーフ(任意)」「マクルーフ(忌避)」「ハラーム(禁止)」)」がどのような相関性を持っているかを考察しています。「ハラール/ハラーム」の 2 分法の由来について、聖典クルアーンの章句やハディース(ムハンマドの言葉)を引きながら紹介しています。
2. ハラール食品、ハラール対応の製品
- ユミ・ズハニス・ハスユン・ハシム編『ハラルをよく知るために』(日本マレーシア協会 2014 【DL681-L80】)
マレーシア国際イスラーム大学(IIUM)国際ハラル研究研修機関(INHART)に所属する研究者等が執筆した記事をまとめた書籍Halal : all that you need to know(Institut Terjemahan & Buku Malaysia 2013)の日本語訳です。生活と関係するハラールの話題を幅広く紹介しており、ハラール食品、化粧品、日用品、医薬品について詳しく取り上げています。 - 小杉泰著「ハラール食品とは何か--イスラーム法とグローバル化」(井坂理穂, 山根聡編『食から描くインド : 近現代の社会変容とアイデンティティ』(春風社 2019 pp. 341-371.【GE631-M1】)
近現代インドの食文化に関する資料の第九章として、イスラームの食事規定を取り上げています。イスラーム法の法体系、ハラールの概念、豚肉・飲酒禁止の理由、ハラール食品の日本や世界での広がりとグローバル化の中での意義等を解説しています。 - edited by Yunes Ramadan Al-Teinaz, Stuart Spear, Ibrahim H.A. Abd El-Rahim,The halal food handbook(John Wiley & Sons, Ltd. 2020 【DL681-D1】)
ハラール食品に関する事項を幅広く扱う資料です。特に、ハラールの観点からみた動物の飼育・と畜・加工の方法、加工食品と食品添加物、遺伝子組み換え成分、衛生用品・化粧品等について詳しく解説しています。また、ハラールの国際規格をめぐる議論、EUにおける法規制、食品偽装の事例、ハラールとコーシャ(ユダヤ教の食事規定)の対比、諸外国の食品事情(アラブ諸国、エジプト、米国、イタリアのハラール市場、認証等)を紹介しています。 - edited by Mian N. Riaz and Muhammad M. Chaudry,Handbook of halal food production(CRC Press, Taylor & Francis Group, CRC Press is an imprint of the Taylor & Francis Group, an informa business [2019] 【PC21-D3】)
ハラール食品の生産要件についての資料です。ハラールの要件を満たすための食品生産の観点から、食肉、魚・シーフード、乳製品、シリアル・菓子類、酵素、ゼラチン、フレーバー、アルコール、食品添加物、栄養補助食品、遺伝子組み換え食品、動物飼料、化粧品、食品表示・包装等の扱いについて解説しています。また、コーシャ、ハラール、ベジタリアンを比較して相違点等を紹介する章もあります。
3. ハラール認証制度(日本・海外)
- 並河良一著『ハラル製品対応マニュアル : 商品企画から認証マーク、製造、管理、販売まで』(蒼天社出版 2019 【DE151-M16】)
ハラール制度やハラール製品についての解説のほか、ハラール制度の法的側面、制度の地域差、制度・規格の国際的統合の状況、海外のイスラーム市場と日本企業の成功事例、国内市場の状況等、企業がイスラーム市場に参入するための情報を紹介しています。 - 森下翠惠, 武井泉著『ハラル認証取得ガイドブック : 16億人のイスラム市場を目指せ!』(東洋経済新報社 2014 【DL681-L49】)
東南アジアのハラール市場規模、マレーシア、インドネシア、タイのハラール制度、日系企業のハラール認証取得事例、認証取得の課題と対策等を紹介しています。付録として、「JAKIM(マレーシアイスラム開発局)とMUI(インドネシアウラマー協議会)が認定した日本のハラル認証機関」「JAKIMとMUIが認定した国外のハラル認証機関一覧」を掲載しています。 - 民谷栄一, 富沢寿勇監修『ハラールサイエンスの展望 = A new horizon of Halal science』(シーエムシー出版 2019 【PC25-M13】)
本書によれば、ハラールサイエンスは「主にハラール認証のために、自然科学(技術)の専門家がイスラーム法(シャリーア)の専門家と連携しながら生産品のハラール性を鑑定する脈絡」で使用される用語です。本書は「総論:ハラール産業の現状と展望編」「ハラールサイエンスの役割と最新動向編」「ハラール産業の将来展望編」「ハラール食品市場とハラール制度の展望編」の4部分、22章からなり、ハラール認証のための食品の鑑定技術、海外・国内のハラール産業の動向(食品、医薬品、化粧品、イスラーム金融、ハラール観光、ハラールサプライチェーン管理)、東南アジアのハラール食品市場とハラール制度等について解説しています。 - 日本と海外のハラル認証機関 - ハラル基礎知識(一般社団法人ハラル・ジャパン協会)
日本、海外のおもな認証機関の名称、URL等を掲載しています。 - 「ハラール調査 ‐農林水産物・食品の輸出と海外のハラール産業政策動向‐(2018年3月)」(ジェトロ農林水産・食品課、ジェトロ・ジャカルタ事務所、ジェトロ・バンコク事務所、ジェトロ・クアラルンプール事務所、ジェトロ・サンパウロ事務所、ジェトロ・ドバイ事務所、ジェトロ・イスタンブール事務所))
マレーシア、インドネシア、アラブ首長国連邦のハラール政策動向、イスラーム協力機構イスラーム諸国規格研究所(OIC/SMIIC)の規格標準化、イスラーム教徒が多数を占めない国のハラール関連制度(タイ、ブラジルの事例)に関する調査結果をまとめています。 - 「主要国におけるハラール関連制度・市場動向 -農林水産物・食品の輸出に向けて-(2016年3月)」(ジェトロ農林水産・食品課、ジェトロ・ジャカルタ事務所、ジェトロ・シンガポール事務所、ジェトロ・クアラルンプール事務所、ジェトロ・ドバイ事務所、ジェトロ・リヤド事務所、ジェトロ・イスタンブール事務所)
マレーシア、インドネシア、シンガポール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコのハラール関連制度、市場動向に関する調査結果をまとめています。 - ハラールに関する情報(農林水産省)
- 「ハラール食品輸出に向けた手引き(更新版)」
農林水産省が作成した、ハラール食品輸出のための手引き資料です。食品に関するハラール認証の取得プロセス、ハラール対応の地域性(東南アジア、中東)、各国制度(マレーシア、インドネシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)、日本国内のハラール認証機関のうち他国の認証機関から公認を受けている6機関の基本情報、申請プロセス等を整理しています。
- 「ハラール食品輸出に向けた手引き(更新版)」
- 富沢寿勇著「ハラール産業と監査文化研究 (特集 ハラールの現代 : 食に関する認証制度と実践から)」(『文化人類学 = Japanese journal of cultural anthropology』 / 日本文化人類学会 編 83(4):2019 pp.613-630 【Z8-240】)
ハラール認証制度を監査文化の側面から考察しています。認証制度が早くから進展したマレーシアの制度を概観したのち、東アジア(中国、台湾、韓国、日本)の現地事情やハラール認証団体等を紹介しています。
台湾の事情については、本論文と同じ雑誌に掲載された、砂井紫里「台湾ムスリムの食文化をめぐる交渉と創造 : 清真、ハラール、ムスリム・フレンドリー」でも紹介しています。